日本生気象学会雑誌
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原著
環境湿度の違いが吸湿性の異なる肌着着用時における発汗開始前後の温熱生理反応に及ぼす影響
石井 与子平田 耕造
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2010 年 47 巻 1 号 p. 35-44

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抄録

本研究は,吸湿率の異なる 2 種類の肌着(ポリエステル(P),キュプラ/ポリエステル(C))着用時に環境湿度の違いが平均皮膚温に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.被験者 7 名に両肌着を着用させ,環境温度を 240 分間で26℃→20℃→35℃と変化させた.その結果,相対湿度(RH)50%では発汗開始後 C における収着熱発生の影響が認められ,C と P における平均皮膚温の差(C −P)は 0.49℃有意にプラス方向に変化した(p < 0.05).しかし,70%RH での平均皮膚温には収着熱の影響は認められなかった.さらに,室温を 26℃とし,湿度を 30,50 および 70%RH から 95%RH に上昇させて肌着のみに吸湿させる実験では,P と C 両素材の衣服表面温度の変化は,初期湿度が高くなるほど上昇分が有意に小さくなった(p < 0.05).これは,収着熱発生が減弱されたことを示した.これらの結果から,吸湿率の異なる肌着着用時,発汗開始後の収着熱発生による平均皮膚温の変化は環境湿度の影響を受けることが判明した.

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© 2010 日本生気象学会
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