日本生気象学会雑誌
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総説
家畜の生産と福祉をめぐる最近の展開
竹村 勇司
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2011 年 48 巻 2 号 p. 57-68

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抄録

20 世紀中期からの集約畜産の急発達にともない家畜福祉問題が深刻化した.育種改良による家畜の高い生産機能と生産効率を優先する施設加工型の家畜生産方式によって家畜の行動,代謝,繁殖に障害が生じている.また苦痛をともなう外科処置も実施されている.1964 年の Ruth Harrison 著 Animal Machines によって家畜福祉問題が広く知られるようになった.英国農用動物福祉委員会が提案した 5 つの自由は,行動発現の自由と身体的精神的健康からなる家畜の生活の質の改善を目指し,現在,飼育動物一般における福祉目標として広く採用されている.21 世紀を迎え福祉品質という新概念が提起され,家畜福祉に配慮した家畜生産が食の安全と安心につながることが認識された.発展途上国の家畜生産量は 20 世紀末に先進国を追い越し,粗放畜産における家畜福祉の向上が重要性を増している.家畜の健康増進は家畜の生産と福祉の共通目標であり,行動学と環境生理学は家畜の飼養環境改善とストレス軽減を図るための科学的根拠を提供できる.

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© 2011 日本生気象学会
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