日本生気象学会雑誌
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原著
脳塞栓と脳血栓の発症に関する生気象学的検討
福永 篤志小山 英樹布施 孝久原口 安佐美
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2021 年 57 巻 4 号 p. 127-133

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抄録

脳梗塞の発症メカニズムは明らかでなく予防法も確立されていない.今回,rt-PA療法が施行された比較的重症な脳梗塞初発例を対象に脳塞栓(A群)と脳血栓(B群)に分類し,発症時刻と月,当日の気圧配置パターンを調査し,両群の発症の違いを統計学的に分析した.平均気温が最も高かった7~9月は,B群が有意に多かった(p=0.0248,フィッシャーの直接確率法.以下同じ).時間帯は,午前6~7時はB群が有意に多く(p=0.0357),午後2~7時と午後11~午前5時はA群が有意に多かった(p=0.007,p=0.0467).気圧配置パターンは,その他高気圧型(移動性高気圧型,帯状高気圧型のどちらにも分類できない高気圧型)がB群に有意に多かった(p=0.0166).脳梗塞の主な原因は動脈硬化と不整脈であるが,気象変化や生活リズムなどの体外環境の影響で脱水状態等となり突然血栓・塞栓が形成されてしまう可能性がある.脱水予防のため適時適度な飲水補給等の指導が必要だろう.予防法の確立に向け,さらなる調査に期待される.

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