日本生気象学会雑誌
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ヒト中核部温の示標としての食道温及びそれと心臓との関連性
白木 啓三今田 育秀佐川 寿栄子
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1983 年 20 巻 2 号 p. 74-80

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抄録

ヒトの中核部温の代表として心臓血の温度を測定することが最も合理的であると考えられるが, この温度はある程度の手術操作を必要とするため一般的には行うことは出来ない。従って被験者に苦痛を与えず容易に測定することが出来て, しかも外界の温度に妨害を受けることなく心臓血の温度にすみやかにかつ正確に反応するような条件を充す部位の温度が測定出来ることが理想的である。進行した悪性腫瘍患者の延命効果をはかるために施行される高体温療法に際し右心室及び大動脈弓の血液温を直接測定する機会を得たので, 広範囲にわたる心臓血温の変化に対応する以上のような条件を充す中核部温の測定部任の決定を行う目的で検討を加えた。その結果, 鼓膜温は心臓血温の変化に対応するに要する時間が長く (220-240秒) , しかも急速な血液温の変化に追従しないことが判明した。しかし定常状態や体温変化が遅いときには大動脈血温を示すことが出来る。下部食道は急速な心臓血温の変化にも追従することが出来, しかも大動脈血の温度によく対応する。更に右心室温は大動脈弓温よりも0.2℃高く, 鼓膜温或いは食道温は大動脈血温を示すことも判明した。
以上より下部食道温はヒト中核部温を代表する最も良好な示標であると結論した。

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