日本生気象学会雑誌
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急性低圧低酸素環境下における安静時および最大下運動時心機能
菊地 和夫浅野 勝己高橋 裕美千葉 智則
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1987 年 24 巻 1 号 p. 37-44

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抄録

低圧低酸素環境への急性暴露時の, 安静時および最大下運動時における心機能応答特性を明らかにするために, 健常成人男子5人を用いてインピーダンス法と左室収縮時相分析法 (STI's法) との同時測定を行い, 心臓のポンプ機能と心筋収縮性の両面からの検討を行った.
1) 安静時心拍数 (HR) は5, 000m相当高度以上で常圧 (SLI) に比し有意に増加 (約50%) したが, 一回拍出量 (SV) の低下傾向と心拍出量 (Q) の増加傾向は, SLと比し有意ではなかった.
2) 安静時全電気的機械的収縮期 (QS2) , 左室駆出時間 (LVET) はSLに比し, 5, 000mと6, 000m相当高度で有意に減少した.また, 心筋収縮性の一指標であるPEP/LVET比は, 高度の増加に伴い低下し, 6, 000m相当高度においてはSLに比し有意な低下を示したことから, 安静時の心筋収縮性は高度の上昇に伴い高進することが推察された.
3) 同一強度に対する運動時HRは高所暴露下で有意に高値を示し, また, 運動時SVは高所暴露下の方がSLでの値より低値を示した.しかし, いずれの場合も模擬高度間の有意差は認められなかった.
4) 運動時STPsは, 運動強度の増大に伴いQS2とLVETの直線的な有意な短縮が認められた.PEPは安静から50wattの運動強度までは短縮を示したが, さらに75wattに運動強度を増加してもPEPは短縮を示さなかった.いずれの指標も高所暴露下の方がSLよりも有意に低値を示したが, 模擬高度間に有意差は認められなかった.
5) PEP/LVET比は安静時から短縮を示した6, 000m相当高度を除き, 各高度とも安静から50watt運動強度にかけて短縮したが, さらに75wattに運動強度が増大するとこの比は延長する傾向を示した.また, この傾向は6, 000mにおいて比較的著しかった.これらのことから, 急性低圧低酸素環境下での, 最大下運動時の心機能は軽運動までは高進するが, ある強度以上の運動では機能低下を示すものと推察された.

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