日本生気象学会雑誌
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運動実験による綿とポリエステル複合素材の熱・水分移動
菅井 清美中島 利誠
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1988 年 25 巻 1 号 p. 3-9

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抄録

衣服を通しての皮膚から環境への熱と水分の移動は, 着用快適性に関係がある.被服材料の特性がこれらの移動に及ぼす影響を検討するために, 綿とポリエステルの2層構造からなる複合素材を用いて, シャツとズボンを作製した.それらは, 右半身と左半身に分けて同時に2種類の素材が着用できるようにした.被験者は23.2℃, 10.4mmHg (水蒸気圧) , 0.1m/secの人工気候室で, 最大酸素摂取量の約65%のトレッドミルによる運動を10分間行った.
口腔温と平均皮膚温は, 肌側にポリエステルを着用したときのほうが綿の場合より高く, 体重減少量も大きかった.身体左右に同じ素材の衣服を着用したときの身体左右の生理学的差は, 衣服内では身体右側の温度, 湿度が左側より高く, 衣服上では逆の結果がみられた.これは身体左右の形状の差やあるいは動き方の差による皮膚と衣期間の微気候が影響していると思われる.身体片側での熱と水分の移動における衣服素材の効果では, 肌側に綿を着用した場合に運動後の温度低下がポリエステルの場合よりも遅く, 大きく, 綿のより高い水分収着機能によるものと考えられる.同じ傾向が湿度でもみられた.

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