1995 年 32 巻 1 号 p. 43-45
わが国では, 森林浴はその導入期以来, とくにフィトンチッドの効用に注意が払われてきた.しかし, 森林浴本来の成果が上がっているかというとそこには疑問がある.本稿は, ドイツの保養地での森林浴の実態を踏まえて, 森林浴がいかにしてより有効なものとなるかを, 保養地における人々の保養行動という側面から論じた.森林浴は, フィトンチッドに代表されるような物質的, 生科学的な側面を追及する態度によってのみならず, むしろ地人融合, 統一体としての人間-環境系といった地理的観点に基づいて論じられるべきであろう.