日本生気象学会雑誌
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南極におけるヒト概日リズムの季節変動
米山 重人橋本 聡子本間 研一
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1999 年 36 巻 2 号 p. 83-87

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抄録

南極においてヒト概日リズムにつき, 二つの同調因子のもとで, 睡眠覚醒リズム, 活動リズム, 血漿メラトニンリズム, および直腸温リズムがどのように変化するかを検討した.二つの同調因子とは, 一つは年間を通じて極端に変化する明暗周期であり, もう一つは季節変動を示さない労働スケジュールである.被検者は9名の成人健常男子で, 15ヶ月間南極圏 (南緯66.5度以南) に滞在し, うち13ヶ月間, 南極観測隊員としてドーム観測拠点 (南緯77度) で越冬した.睡眠, 日常活動については位相, 時間ともに季節変動を示さなかった.これに対し, メラトニンの夜間分泌帯のピークの位相は, 夏に比べて冬に約4時間の位相後退を認めた.直腸温が夜間最低値をとる位相も冬に約2時間の位相後退を認めた.これらの知見により, 睡眠, 活動リズムは明暗周期よりも労働スケジュールによって優位にリセットされるが, メラトニン, 直腸温リズムは明暗周期の影響をより強く受けると考えられた.厳しい労働スケジュールは, ヒト概日リズムにおいて明暗周期に拮抗する可能性があると思われる.

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