極限環境としての宇宙環境への生体適応と, これに伴い出現するさまざまな障害について概説した.例えば, ヒトが宇宙空間の微小重力環境に曝露されると, 頭部方向へ体液が移動し, これに適応するために循環血液量が減少して, 心循環系変調 (cardiovascular deconditioning) が引き起こされる.宇宙環境への適応後に宇宙飛行士が地上に帰還すると, 直ちには1G環境に再適応できず, 起立耐性が低下する.この機序の解明のために, 1998年4月に打ち上げられたスペースシャトル・ニューロラブでなされた最近の研究などについても紹介した.