情報システムに関する業務の内外製判断を規定する要因に対する理論的なアプローチに,取引コスト経済学(TCE)と資源ベース企業観(RBV)がある.しかし,これまで両者はそれぞれ独立した理論を展開してきており,それらの複合的な視座にもとづく実証研究の蓄積はいまだ十分とは言い難い.本研究では,過去にわれわれが実施した質問票調査データの分析にもとづいて,企業が自社の情報システムに対して抱く認識と実際に採用されている内外製区分(インソーシング/アウトソーシング)との関係を検討する.具体的には,情報システムの内外製判断においてTCEのロジックを重視する「TCE動機」とRBVのロジックを重視する「RBV動機」が相互補完的に機能しているケースと,相反するケースの2つの存在を明らかにし,その含意について議論する.