2019 年 71 巻 6 号 p. 1029-1032
射出成形で大面積の微細形状を転写する際に,金型材料と樹脂の熱収縮の違いによって成形品に残留応力が発生し,離型が困難になることが問題となる.本論文では,この問題を解決するために「指向性凝固法」と呼ばれる新しい方法を提案する.この方法は,キャビティの一端から他端に向かって樹脂を連続的に固化させることにより,製品の熱収縮と離型抵抗を減らす.この方法を実現するために,温度勾配を作れる金型を開発し,樹脂の指向性凝固を実現した.この金型を用いて,均一温度下と温度勾配下の成形条件下で,表面に微細な形状をもつ板状製品を成形した結果,温度勾配下での成形品の方が均一温度下より離型抵抗が12%低かった.この実験から,指向性凝固法によって,表面に微細形状を持つ成形品の離型性が向上することが確認された.