2021 年 73 巻 1 号 p. 57-63
本研究では,角柱建物モデルの後流にあるカルマン渦放出の動的システムの識別を行った.まず,瞬時風速データに対して固有直交分解を実行し,振幅2 乗コヒーレンスを用いてモード間の位相整合性を検出した.4 つの最もエネルギーの高いモードにおいて,モード2 は流入変動風によって制御され,モード1,3,4 は,建物の後流で放出される主な渦を示すことが分かった.次に,3 次多項式回帰モデルを用いて,モード1,3,4 の動的システムを同定し,状態の軌跡の平均的な傾向を示した.回帰モデルの2 つのリミットサイクルはカルマン渦の2 つの回転方向を示し,システムに摂動がない場合の最終状態を表した.さらに,回帰モデルから生成された軌跡から2 つの特徴的な周期が見出され,それぞれ短周期と長周期の変動を示した.