2024 年 76 巻 2 号 p. 147-152
プリオン病は致命的な神経変性疾患であり,正常型プリオンタンパク質がミスフォールディングした異常型プリオンタンパク質の凝集体によって引き起こされる.1次構造が同じであるプリオンタンパク質において,正常型が異常型に構造変化する原因は未だ不明である.本研究では,ヒト正常型プリオンタンパク質と異常型プリオンタンパク質の正準分子軌道計算を行った.正常型と異常型の電子構造は大きく変わっており,単体では正常型が安定して存在することを確認した.異常型プリオンの電子状態計算結果から層形成の相互作用エネルギーを見積もった結果,異常型プリオンは安定して層構造を形成することが明らかとなり,アミロイド線維化が進行しやすくなることが示唆された.