2025 年 77 巻 1 号 p. 71-77
マルチエージェント強化学習を用いた幹線道路の交通信号制御は,エージェント間の適応応答と分散制御を通じて,複雑なネットワークに対しても柔軟で拡張性の高い制御を提供するとされている.本研究では,この制御において,隣接交差点からの交通情報を活用することで制御性能が向上する可能性があること,異なる学習環境が制御性能に影響する可能性があることを検証する.ミクロ交通シミュレータ上で比較実験を実施した結果,自交差点と隣接交差点の両方から得られたデータにより状態変数が定義され,かつ,全交差点のエージェントを同時に学習させたモデルが,最も高い性能を発揮できることを確認した.また全体の傾向として,状態変数を待ち行列長ではなく車両台数とした場合に,幹線方向に対する制御性能が高まる一方で,多方向に対する制御性能が低下することを確認した.