抄録
1.日本列島の日高山脈と赤石山脈を対象にして,亜高山帯植生のハビタット分割様式の地理的な差異を明らかにした。2.両山脈亜高山帯領域をWIで比較したところ,赤石山脈の亜高山帯植生はより狭い温度領域に成立しており、また、標高の傾度に対するベータ多様度も赤石山脈のほうが高かった。3.作成したマトリクスデータを数量化II類により解析したところ,植生の分布パターンを説明する環境要因として,日高山脈では標高が,赤石山脈では標高に加えて起伏度が重要であることが示された。4.標高と起伏度の傾度上における常緑針葉樹林,ダケカンバ林,ハイマツ林についてハビタットの重なり合いを求めた結果,両山脈ではハビタット分割様式が異なり,赤石山脈では日高山脈に比べ標高の傾度上でハビタットの重なり合いが大きく,起伏度の傾度上ではハビタットの分割が生じていることが明らかとなった。5.以上のようなハビタット分割様式の地理的な差異は,亜高山帯植生の垂直幅が狭くなることで別の環境傾度上においてハビタット分割が生じることを示しており,ハビタット分割様式の多次元化という植生分布パターンの形成プロセスを示している。