状態空間モデルの枠組みでは、モデル内の変数を「観測される変数」と「観測されない変数」の2種類に明示的に分けてモデル化が進められる。この枠組みによって観測値に付随する観測誤差を適切に処理することが可能となり、モデル内のパラメーターを偏りなく推定することが可能になる。さらに、状態空間モデルの枠組みは、観測値の動態を、その「主流部分」と「派生部分」に分ける効果も持っている。本稿では、2種類の水田害虫(ニカメイガとツマグロヨコバイ)の50年間の年変動解析を例として、状態空間モデルの枠組みを用いる効果と、その適用の際に生じる諸問題(トレンド除去および初期値問題、モデル評価など)について議論する。