抄録
植物病原体は様々な手段で植物に伝染する。風雨や土壌を介して葉や根部に伝染するもの、虫の吸汁や食害に便乗して伝染するもの等々、植物を取り囲むあらゆる環境を利用して病原体は植物に伝染しようとする。多くの病原体は傷口や自然開口部(気孔や水孔等)から侵入したり、自ら積極的に植物体内に侵入したりするが、これらは宿主の生育や発達のステージによらず起こり得る。一方で、受粉や種子形成といった、植物の繁殖のタイミングをうまく利用して植物体内に侵入する病原体もいる。このような病原体は、すぐに宿主植物に病気を引き起こさずに、花器や種子において生息し、一気に発病する機会をうかがっているものもいる。産業として花粉も種子も国際流通している現状において、花粉や種子に汚染した病原体が広く伝搬されるリスクが高まっており、これによってパンデミックと呼ばれる広範囲に爆発的な被害を出す病害が懸念されるようになった。本稿では、パンデミックを引き起こす病原体の中で、花器伝染や種子伝染することが知られている植物病原細菌に着目し、植物体上での侵入や発病に関する生態や他の常在菌との関わりについて紹介したい。