本研究の目的は,女性用の着衣について,ゆとりの違いが着衣熱抵抗におよぼす影響を明らかにすることである.S,M,Lの3種のサイズの着衣の熱抵抗を立位,椅座位,投げ足位および仰臥位の4姿勢についてサーマルマネキンを用いて測定した.写真撮影法による測定結果から,ゆとりによる着衣面積比の違いを検討し,特に椅座位と投げ足位で着衣面積比にゆとりによる違いがあることと,立位と椅座位で着衣表面に形成される折れや重なりが異なることから,4姿勢でゆとり毎に着衣面積比の測定が必要であることを示した.測定した全姿勢で着衣熱抵抗にゆとりによる違いがあり,ゆとりの大きい着衣の熱抵抗が大きくなる傾向があることが認められた.居住者の姿勢が多様であり着衣のゆとりも多様である日本の住宅における温熱環境評価には,ゆとりによる着衣熱抵抗の違いを考慮することが必要であることを示した.