繊維製品消費科学
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51 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
交さ点
時辞刻告
報文
  • 堀場 洋輔, 乾 滋, 上條 正義, 高寺 政行, 清水 義雄
    2010 年 51 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    熱流体シミュレーションによるヘルメット装着時の温度分布および温熱快適性の予測可能性を検討した.シミュレーションにおいて人体は65分割体温調節モデルとし,環境は2次元熱流体場の離散化モデルを用いた.ヘルメットは人体モデルの頭部clo値として表現した.シミュレーションの結果,ヘルメットの有無による頭部表面温度変化を精度0.5℃で予測できることが明らかになった.しかしながら,各条件における温度は実測値に比べ約0.4~1.0℃高い結果となった.ただし,シミュレーションと計測実験における被験者の体型の差異等を考慮すると,ある程度の妥当性を持つ結果であることが示唆された.一方,温熱快適感は,シミュレーションによる予測精度が十分ではなく,改善の余地があることが示唆された.

  • ―女性用の着衣についての実測研究―
    大和 義昭, 藏澄 美仁, 石井 仁, 深川 健太, 飛田 国人, 松原 斎樹, 柴田 祥江
    2010 年 51 巻 4 号 p. 281-292
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,女性用の着衣について,ゆとりの違いが着衣熱抵抗におよぼす影響を明らかにすることである.S,M,Lの3種のサイズの着衣の熱抵抗を立位,椅座位,投げ足位および仰臥位の4姿勢についてサーマルマネキンを用いて測定した.写真撮影法による測定結果から,ゆとりによる着衣面積比の違いを検討し,特に椅座位と投げ足位で着衣面積比にゆとりによる違いがあることと,立位と椅座位で着衣表面に形成される折れや重なりが異なることから,4姿勢でゆとり毎に着衣面積比の測定が必要であることを示した.測定した全姿勢で着衣熱抵抗にゆとりによる違いがあり,ゆとりの大きい着衣の熱抵抗が大きくなる傾向があることが認められた.居住者の姿勢が多様であり着衣のゆとりも多様である日本の住宅における温熱環境評価には,ゆとりによる着衣熱抵抗の違いを考慮することが必要であることを示した.

  • ―体温調節反応に及ぼす月経周期と日内変動による影響―
    安坂 友希, 平田 耕造
    2010 年 51 巻 4 号 p. 293-301
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    女性の体温調節反応が,1日を4分割した時刻において月経周期によってどのように影響されるのか詳細に検討することを目的とし,健康な成人女性9名を被験者として,卵胞期と黄体期に0時,6時,12時,18時それぞれ別々の日に1回ずつ(1人8回)実験を行った.実験は,座位姿勢による下肢温浴(水温35→41℃)を負荷して24.0±0.5℃,45±3%RH環境で,皮膚温,直腸温,皮膚血流量,局所発汗量を測定した.体温に対する局所発汗量増加感度については,いずれの時刻においても月経周期の影響はなかったが,黄体期において,皮膚血流量増加感度は6時の前腕部で大きくなった(p<0.05).したがって,本研究では,熱負荷時の女性の皮膚血管反応に及ぼす月経周期の影響は,時刻によって異なることが明らかとなった.このため,女性の快適な衣服を考えるうえで,月経周期と時刻の組み合わせによる影響を考慮する必要性が示唆された.

  • ―第1報 裏地素材の肌触りと物性値の関係―
    潮田 ひとみ
    2010 年 51 巻 4 号 p. 302-307
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    29℃,30%RHに実験室を設定し,紳士用スーツに用いられる9種類の裏地の風合いを14対の用語で判定させた.被験者は一定の方法で裏地を触って風合い判定を行った.裏地の風合い評価には,ほとんど男女差がみられなかった.被験者は裏地の滑らかさや滑りやすさ,柔らかさを判定することができた.しかし,裏地のまとわりつきやすさは,手触りによる風合い計測によっても,裏地の物理特性によっても,判定することができなかった.

  • 山口 さやか, 後藤 晃希, 内田 有紀, 西林 絵理香, 成瀬 正春, 久保 徹也, 秋山 美紀
    2010 年 51 巻 4 号 p. 308-312
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    寒冷時の足部の濡れ条件下で防水靴と非防水靴を着用したとき,主観申告ではわからない生理反応,血圧,脈拍,皮膚血流量,皮膚温に着目し検討した.本研究では,環境温度15±0.5℃,相対湿度50±5%RHの人工気候室内で約20分間椅座安静を保った後,5分間椅座安静状態と右足を10℃の水を張った水槽の中に5分間入れた状態の生理反応と主観申告を測定した.被験者は若年女性8名である.入水後における生理反応は,非防水靴では血圧の上昇,脈拍の減少,中趾皮膚温の低下,皮膚血流量の減少が有意に認められたが,防水靴では皮膚血流量の減少のみ有意に認められた.主観申告においては,どちらの靴を履いても入水後に程度に差はあるものの不快と感じることが分かった.以上の結果から,防水靴を着用しても非防水靴を着用しても,入水後には不快と感じる.しかし,防水靴を着用することによって血圧の上昇を抑えられることが示唆された.

  • 前川 佳徳, 河崎 雷太, 井上 英美子
    2010 年 51 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,着心地評価のための下着装着シミュレーションが行われ,下着と人体との接触面圧分布が得られている.本報告では最初に,簡易下着と剛体マネキンを用いた,シミュレーションの検証のための実験結果を紹介し,ついで同条件でのシミュレーション結果との比較を示している.実験によるシミュレーションの検証の結果,本研究で提案している下着装着シミュレーション手法は,実用レベルで有用であることが確認された.本シミュレーション手法によるいくつかの応用がなされているが,一例として着座動作における下着と人体との接触面での圧力分布の変化状況の結果を紹介する.ここでは,人体は超弾性体としてモデル化されている.これらの結果は,下着等の設計で,バーチャルな段階で心地を評価するのに有効である.

  • 三野 たまき, 上條 真友子
    2010 年 51 巻 4 号 p. 321-326
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    若年女性の関心の高い下肢部の浮腫の内,足部位に着目し,その実態を明らかにした.被験者は20歳代前半の成人女子8名(BMIは20.0±1.5)で,彼女らそれぞれの月経周期の高温期に足部容積を測定した.なお測定には自作した測定用シューズを用い,彼女らの右足部(利き足)の,足首(部位B)と足首より先端(部位A)の2部位に分けて,8:00~16:00の間に5回容積を測定した.被験者の右足部容積の増加率(y)を調べたところ,測定時間(x,単位は分)との間に,y=3.34(1-e-t/235.1)(R2=0.997)の曲線近似がなされた(足部全体).なお椅座位で8時間(480分)過ごした後の足部容積は,部位Aは561.7±50.2mlから579.3±51.7mlへと17.5ml,部位Bは194.5±35.8mlから200.9±40.0へと6.4ml,有意に増加した.また,部位Aの容積変化率はy1=3.24(1-e-t/242.2)(R2=0.976)に曲線近似されたことから,8時間以内では相対容積増加率が徐々に増えつづけることがわかった.一方部位Bのそれは,y2=3.41(1-e-t/151.4)(R2=0.949)に曲線近似され,部位Bは部位Aに比べ,容積増加率の時定数が90.4分短くなることがわかった.このように,同じ足部でも足首とその先端部では,部位特異的に容積増加率の経時変化の様子が異なった.

  • 井上 真理, 前田 正登, 田上 悦子, 今村 有里, 宮澤 清
    2010 年 51 巻 4 号 p. 327-332
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    失禁等の不安を抱えてはいるが,日常生活に不自由のない高齢者を対象としたパンツ型紙オムツとして,伸縮性不織布を用いたオムツのはき心地について検討を行った.この伸縮性不織布の性質を,肌着用編布と比較して改良を加えることによって,普段の肌着に近いおしりにフィットしたオムツを開発するための基礎研究を行った.パンツ型オムツのための材料特性の測定条件を決定し,肌着用編布の特性と比較した結果,曲げ,せん断,圧縮エネルギー,摩擦係数,厚さの値が大きいことがわかった.主観評価に最も影響を及ぼす材料特性は臀部下方部の伸長特性,せん断特性,吸収体の曲げ特性であることが明らかになった.また3次元計測の結果より最大移動量は,ウェスト部や吸収体のある部分では小さく,大腿部へ向けて大きくなる傾向が,どの試料でもみられた.各測定点における最大移動量とはき心地の主観評価値は,臀部下方部の材料特性に強い相関がみられ,伸長特性を付与した試料は最大移動量が大きく主観評価値が高かった.臀部下方部に伸長ひずみの大きい材料を用いた紙オムツは人の動きにフィットすると考えられる.

  • 瀬谷 共美, 永井 伸夫, 田村 照子
    2010 年 51 巻 4 号 p. 333-337
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    ヒトの体臭は,様々な種類のにおい成分から成り,これらによって時には不快感がもたらされることがある.本研究では若年女子のにおい成分について定量分析すると共に,被験者間の相違について検討することを目的とした.におい成分を採取するため,10人の健康な女性(年齢は21~34歳)を被験者とし,背部,腋窩に長方形の試料布(100%綿製5×10cm)を取り付けたTシャツと足底部に同様の試料布を取り付けた靴下を32時間着用させた.分析はガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で,ヘッドスペース法により行った.結果,アルデヒド系化合物ではオクタナール,ノナナール,ノネナール,アルコール系化合物では2-エチルヘキサノール,ケトン系化合物では6-メチル-5-ヘプテン-2-オンがすべての被験者において共通して検出された.また,背部においてアルデヒドとケトンが,他の部位と比較して有意に多く検出された.ノネナールを含めアルデヒド系3種については,検出量に差はあるものの,全ての被験者において認められ,これらのアルデヒド系化合物は,背部の皮膚から分泌された脂肪酸の酸化分解反応によって産生されたものと考えられた.以上,衣服に付着した体臭成分を分析することは,心理学的及び生理学的にQuality of Life (QOL)の向上に貢献するものと思われる.

  • ―発汗による湿潤の影響―
    朴 暻煕, 田村 照子
    2010 年 51 巻 4 号 p. 338-345
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    皮膚表面のレプリカを用いてその性状を観察する方法は,香粧品分野を中心に広く実施されている.本研究では,衣服の着用により生じる摩擦・圧力が,皮膚に及ぼす影響を形態学的に観察することを視野に入れて,人体各部位の皮膚レプリカを採取,その三次元構造を共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察した.被験者は健康肌の成人女子7名,測定部位は上半身の6点,環境条件は室温27℃及び32℃+足温浴の2条件,各2回繰り返し実験を行った.結果,表面粗さは部位間で有意に異なり,又,皮膚の湿潤によって高さ方向の面粗さパラメータは有意に減少した.以上により本法が皮膚の微小三次元構造を把握する手法として有効であることが示された.

資料
  • 石井 与子, 平田 耕造
    2010 年 51 巻 4 号 p. 346-353
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,吸湿性の異なる肌着着用が平均皮膚温(Tsk)変化に及ぼす発汗レベルの影響を着用実験と文献による比較検討から明らかにすることを目的とした.7人の被験者に吸湿率が異なる2種類の肌着(ポリエステル(P),キュプラ/ポリエステル(C))を着用させ,環境湿度を50%として室温を240分間で26℃~20℃~35℃へと変化させた時,発汗開始後のTsk上昇はCがPより有意に大きく,収着熱の影響が認められた(p<0.05).本研究と他の8つの研究結果の比較検討から,本研究と同様に吸湿性の高い衣服着用に伴うTsk上昇を示した研究の発汗レベルは,総発汗量では0.12~0.15mg/(cm2・min),前腕発汗量では0.07~0.13mg/(cm2・min)の範囲であることが示された.すなわち,吸湿に伴う収着熱発生によるTskの上昇効果は,発汗レベルに依存することが判明した.

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