ニット生地への水分付与は,縫製時の地糸切れ防止対策の一つとして知られている.本研究においては,この水分付与効果が,繊維素材とどのような関係にあるのかを検討したものである.
実験では,綿およびモダル(改良レーヨン)素材のニット生地を試料とし,水分率を変えて縫製実験を行い,地糸切れ発生率を求めた.
その結果,綿ニットでは乾燥状態で地糸切れ発生率が比較的高かったが,水分付与により地糸切れは減少し,従来から報告されている防止効果が確認できた.一方,モダルニットの場合には,乾燥状態では地糸切れの発生があまり見られなかったが,水分率の増加により地糸切れの発生率は高くなり,綿ニットとは逆の傾向となった.綿とモダルの50%混用ニットは,綿とモダルニットの間に位置し,綿と同様に水分付与による低減効果がみられた.
この理由を検討するために,綿とモダルのニット生地(編糸)の外観変化,編糸の解舒力,KES試験機によるせん断・曲げ剛性率,引張張試験機による編糸のエッジ強さなどを測定した.綿ニットとモダルニットの水分付与による傾向の相違は,水分によるモダル編糸の膨潤に起因する自由度の低下,およびエッジ強さの減少が複合的に作用したものと考えられる.
本研究の結果より,ニットの地糸切れの防止対策として,水分付与を考える場合には,素材によって吟味しなければならない.