本研究は社会的規範と集団規範のずれにより起こる規範逸脱に対する,自己評価や感情について検討することを目的とした.大学生を対象に就職活動の面接を想像させ調査を行った.調査協力者は設定場面においてフォーマルなスーツとカジュアルなジーンズのいずれかを着用しており,周囲はそれとは逆の衣服を着用しているとした.想像後の不安や自己肯定感を測定したところ,面接時にスーツを着るという社会的規範を持つ者は,自身がカジュアルウェアであるときに自己評価の低下がみられた.一方,同様に規範意識を持つ者でも同調欲求や過剰適応傾向の高い場合は規範に対する正しさではなく,周囲からの逸脱により否定的感情や自己評価の低下がみられた.ここから,社会的規範に則していたとしても周囲から逸脱することで否定的変化がみられることが考えられた.