2017 年 58 巻 1 号 p. 90-97
発汗サーマルマネキンによる着衣の蒸発熱抵抗の測定精度向上に向けて,Heat loss(HL)法 Mass loss(ML)法の差異とその原因に関する実験的検討を行った.実験条件はマネキン皮膚温・環境気温とも34℃の等温条件とし,模擬皮膚としては綿ニット(C スーツ)とこの上に透湿防水布を被覆したもの(G スーツ)の2 種,着衣はT シャツ・半ズボン,男性用スーツ,つなぎ服の3 種,測定・計算方法としてはHL 法とML 法の2 種とした.HL 法では蒸発熱抵抗の部位差についても検討を加えた.各条件を要因とした分散分析の結果,いずれの模擬皮膚条件でも着衣条件については有意差が認められた(P<0.01).一方,C ス-ツではHL・ML 法の差が大きいのに対し,G スーツではその差が僅少となることが示された.部位別蒸発熱抵抗における模擬皮膚条件の差からも,皮膚から着衣への吸水・拡散が両者の差異を生じていることが示され,今後の測定法としてG スーツの使用が有効であることが示された.