雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
しもざらめ雪の成長過程を組み込んだ雪崩予測システムの検証
阿部 修平島 寛行
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 77 巻 1 号 p. 37-45

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抄録

防災科学技術研究所ではスイスで開発された積雪変質モデル(SNOWPACK)を用いて,雪崩発生予測システムを構築し,その改良に取り組んでいる.この中で,しもざらめ雪の剪断強度はその発達段階によって大きく変化することから,これまでしもざらめ雪に起因する表層雪崩の発生を高精度で予測することは困難であった.そこで以前,筆者らは任意の発達段階にあるしもざらめ雪の剪断強度を決定する『しもざらめ化率』を定義し,それぞれの積雪層の温度,温度勾配により算出される水蒸気輸送量から,これを推定するモデルを提案した.ここでは,これまで山岳地域で観測されたしもざらめ雪の弱層が要因となった5例の表層雪崩について,上記のモデルを組み込んだ雪崩発生予測システムに,最寄りのアメダス観測点の気象データを入力することにより,これらの弱層が再現できるかどうかの検証を行った.この結果,4例で積雪安定度の低い弱層が再現できたことから,この予測手法自体はほぼ実用レベルに達したと評価できる.ただし,この場合でも雪崩発生箇所の近傍に気象観測点が存在することが条件である.

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© 2015 公益社団法人 日本雪氷学会
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