抄録
富士山西面の滑沢では,2014年3月13日から14日にかけて大規模な雪崩が発生した.雪崩は7合目付近からスバルライン四合目駐車場(標高2040m)まで流下し,駐車場の施設を損壊するとともに,広い面積の植生被害を生じた.著者らのこれまでの調査によると,北西面の雪崩跡地(標高2220m)における2013/14年冬季の最大積雪深は少なくとも250cm以上で,1999/2000年冬季からの15年間では積雪の多い年であった.また,滑沢では1945年前後に大規模な雪崩が発生し,その後も小規模な雪崩がくり返し発生しており,雪崩の規模や頻度に応じた植物群落が分布している.今回の雪崩では1945年前後の雪崩跡地に再生していたカラマツ高木林の一部が破壊され,多くの幹折れと流木を生じた.一方,くり返し発生する雪崩に適応性のあるミヤマヤナギ,ミヤマハンノキ等の低木群落やダケカンバ匍匐林では幹や枝の損傷,倒伏などの被害が生じたが,枯死することはなく,旺盛に萌芽,再生していた.滑沢のような雪崩常襲地では,上記のような遷移初期相〜途中相の群落が長期間にわたって維持され,くり返し発生する雪崩が植生遷移の停滞を引き起こしていると考えられた.