抄録
衛星搭載マイクロ波放射計による海氷観測は,1978年以降観測を継続しており,海氷面積の変動が明らかになっている.海氷面積の推定には,海氷のマイクロ波輝度温度特性の把握が重要である.融解期の多年氷は,融解の影響により輝度温度特性が変化する.そこで本研究は,融解期の多年氷のマイクロ波輝度温度特性を明らかにすることを目的に観測を行った.観測は,南極昭和基地沖の多年氷上で多年氷表面,積雪内部層,積雪表面の輝度温度を測定し,積雪断面観測を実施した.多年氷表面からのマイクロ波輝度温度は,表面状態によって輝度温度が大きく異なるが,積雪内部層は,湿雪が存在するために輝度温度が一定であった.また,積雪表面の輝度温度は,表面が湿雪の場合は高く,乾雪の場合は乾雪の光学的厚さが増加すると,垂直偏波と水平偏波共に36GHzの方が18GHzより低くなる周波数特性を示した.これらのことから,融解期における昭和基地沖の多年氷のマイクロ波輝度温度は,多年氷上の積雪に湿雪が存在する場合,多年氷の輝度温度は影響せず,海氷上積雪の状態に依存することが明らかになった.