雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
超高真空極低温透過型電子顕微鏡の開発 ─氷のその場観察をめざして─
香内 晃日高 宏羽馬 哲也木村 勇気渡部 直樹中坪 俊一藤田 和之新堀 邦夫池田 正幸
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2018 年 80 巻 1 号 p. 19-36

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抄録
これまでの透過型電子顕微鏡を使った氷の研究では,鏡体内の残留水蒸気分圧が高く,氷の生成を制御した実験は困難であった.そこで,本研究では超高真空鏡体内の極低温に冷却した薄膜上に氷を作り,それに種々のプロセスを与え,構造・組織変化のその場観察を可能にする超高真空極低温透過型電子顕微鏡を開発した.この装置の概要を紹介し,さらに,この装置を用いておこなった研究の一例を紹介する.ひとつは,マトリックス昇華法と命名した新しい方法による高密度アモルファス氷の生成である.10KでCO:H2O=50:1の混合ガスを蒸着し,その後温度を上昇させると40K前後でCOが昇華し,高密度のアモルファス氷が残る.この氷はH2Oガスのみを蒸着させて作ったアモルファス氷より高密度で,高圧法で作ったアモルファス氷の密度に匹敵する.もうひとつは,10Kでアモルファス氷に紫外線を照射し,その後温度を上昇させると,50K前後で高粘性の液体的状態へ変化することを発見したことである.この液体的状態は50-140Kで観察された.水のガラス転移温度が136Kであることを考慮すると,これは驚くべき発見であり,惑星科学的にも重要な意義がある.
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© 2018 公益社団法人 日本雪氷学会
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