雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
富士山北面における雪崩による撹乱と植生の動態 ─植生の雪崩指標と年輪解析による推定─
梨本 真飯田 有貴夫信田 隆之
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2018 年 80 巻 1 号 p. 3-18

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抄録
富士山北面において生態系に大きな影響を及ぼす雪崩撹乱と植生の動態を明らかにするため,植生の雪崩指標と年輪解析を用いて,雪崩地の分布と植生,雪崩の発生履歴を調査した.特定された雪崩地は19ヶ所で,明瞭な谷地形で雪崩流路が固定化している「沢タイプ」と,火山性砂礫で被われた平衡斜面で斜面上方に大きな雪の吹きだまりが生じやすい場所をもつ「流しタイプ」に大別できた.沢タイプでは再来間隔の短い(1.6〜6年)雪崩,流しタイプでは再来間隔の長い(少なくとも150〜300年)雪崩が多く発生していると推定された.雪崩の再来間隔と影響度は雪崩地の植生を規定し,再来間隔の短い雪崩は遷移初期相(イタドリ・オンタデ群落),妨害極相(落葉広葉樹低木群落),土地的 極相(ダケカンバ匍匐林)の群落を維持している.一方,再来間隔の長い雪崩は大規模な森林破壊をもたらすが,その跡地では地表撹乱の程度によって3つの遷移経路(カラマツ,ダケカンバ,シラビソ前生稚樹)による再生が進み,雪崩後の年数に応じた発達段階の異なる二次遷移上の群落が成立している.雪崩による撹乱は,遷移段階や発達段階の異なる群落を創出し,富士山北面の生態系に多様性をもたらしている.
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© 2018 公益社団法人 日本雪氷学会
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