雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
80 巻, 1 号
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  • 梨本 真, 飯田 有貴夫, 信田 隆之
    2018 年 80 巻 1 号 p. 3-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    富士山北面において生態系に大きな影響を及ぼす雪崩撹乱と植生の動態を明らかにするため,植生の雪崩指標と年輪解析を用いて,雪崩地の分布と植生,雪崩の発生履歴を調査した.特定された雪崩地は19ヶ所で,明瞭な谷地形で雪崩流路が固定化している「沢タイプ」と,火山性砂礫で被われた平衡斜面で斜面上方に大きな雪の吹きだまりが生じやすい場所をもつ「流しタイプ」に大別できた.沢タイプでは再来間隔の短い(1.6〜6年)雪崩,流しタイプでは再来間隔の長い(少なくとも150〜300年)雪崩が多く発生していると推定された.雪崩の再来間隔と影響度は雪崩地の植生を規定し,再来間隔の短い雪崩は遷移初期相(イタドリ・オンタデ群落),妨害極相(落葉広葉樹低木群落),土地的 極相(ダケカンバ匍匐林)の群落を維持している.一方,再来間隔の長い雪崩は大規模な森林破壊をもたらすが,その跡地では地表撹乱の程度によって3つの遷移経路(カラマツ,ダケカンバ,シラビソ前生稚樹)による再生が進み,雪崩後の年数に応じた発達段階の異なる二次遷移上の群落が成立している.雪崩による撹乱は,遷移段階や発達段階の異なる群落を創出し,富士山北面の生態系に多様性をもたらしている.
  • 香内 晃, 日高 宏, 羽馬 哲也, 木村 勇気, 渡部 直樹, 中坪 俊一, 藤田 和之, 新堀 邦夫, 池田 正幸
    2018 年 80 巻 1 号 p. 19-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでの透過型電子顕微鏡を使った氷の研究では,鏡体内の残留水蒸気分圧が高く,氷の生成を制御した実験は困難であった.そこで,本研究では超高真空鏡体内の極低温に冷却した薄膜上に氷を作り,それに種々のプロセスを与え,構造・組織変化のその場観察を可能にする超高真空極低温透過型電子顕微鏡を開発した.この装置の概要を紹介し,さらに,この装置を用いておこなった研究の一例を紹介する.ひとつは,マトリックス昇華法と命名した新しい方法による高密度アモルファス氷の生成である.10KでCO:H2O=50:1の混合ガスを蒸着し,その後温度を上昇させると40K前後でCOが昇華し,高密度のアモルファス氷が残る.この氷はH2Oガスのみを蒸着させて作ったアモルファス氷より高密度で,高圧法で作ったアモルファス氷の密度に匹敵する.もうひとつは,10Kでアモルファス氷に紫外線を照射し,その後温度を上昇させると,50K前後で高粘性の液体的状態へ変化することを発見したことである.この液体的状態は50-140Kで観察された.水のガラス転移温度が136Kであることを考慮すると,これは驚くべき発見であり,惑星科学的にも重要な意義がある.
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