雪氷
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北極海における衛星高度計Cryosat-2 SIRALを用いた海氷厚推定手法の改良と南極海への応用
星野 聖太舘山 一孝田中 康弘
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2018 年 80 巻 4 号 p. 297-317

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抄録

本研究では,南極海では確立されていない衛星高度計Cryosat-2 SIRAL(Synthetic Interferometric Radar Altimeter)を用いた海氷厚推定の足掛かりとして,近年Alfred Wegener Institute(AWI)から公開されている北極海の海氷厚推定手法を改良し,南極海への応用を試みた.改良した手法を用いて北極海における海氷厚プロダクトESA Level2(ESAL2)を作成し,AWIとNational Snow and Ice Data Center(NSIDC)から公開されている既存のCryosat-2海氷厚プロダクトとの比較を行った.また,ブイや航空機ミッションIceBridgeにおいて航空機レーダーなどを用いて観測されたフリーボードと海氷厚を検証データとしてESAL2の妥当性を検証した.ESAL2とブイまたはIceBridgeの海氷厚の平均二乗誤差は0.47mと0.97mであり,AWIやNSIDCの平均二乗誤差との差は0.01m以下であった.以上からESAL2は既存のプロダクトと同程度の精度で海氷厚を推定可能であることが示された.同手法を南極海に応用し船上観測データと比較した結果,平均二乗誤差は約1mであり,平均海氷厚値の2.06mに比べると大きいものの,相関係数0.70と高い正の相関関係がみられた.推定海氷厚は定着氷縁部や一年氷域といった海氷の種類への依存が見られたことから,今後の推定精度向上には,正確な海氷の種類を分類する手法の開発が必要であるということが考えられる.

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© 2018 公益社団法人 日本雪氷学会
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