雪氷
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立山室堂平周辺の積雪表面の化学成分とクロロフィル濃度の空間分布と季節変化
竹内 望 杉山 涼
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2019 年 81 巻 5 号 p. 231-247

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抄録

富山県立山室堂平の積雪表面の化学条件の決定要因およびその雪氷藻類への影響の有無を明らかにすることを目的に,積雪表面の化学成分およびクロロフィル濃度の空間分布およびその季節変化を地図化した.融雪前の4 月では,ほとんどの化学成分が室堂平の南側で高く北側で低い傾向を示した.一方,水の安定同位体比,pH,およびCl− 濃度は,地獄谷噴気孔の付近の積雪が周辺と比べて異なる分布を示した.融雪が進む5 月以降では,ほとんどの化学成分の濃度が4月から大きく低下した一方,Cl− とSO4 2− は,5 月以降も噴気孔周辺で比較的高い濃度を示した.SO4 2− の硫黄安定同位体比を分析した結果,噴気孔周辺では他の領域よりも同位体比が高く,火山ガスに由来するSO4 2− が含まれていることが示唆された.クロロフィル濃度は,7 月以降大きく上昇した一方,その空間分布は化学成分との直接的関係は見られなかった.以上の結果は,立山室堂平の積雪表面の化学条件は,南側から霧として流入する遠距離エアロゾルおよび火山ガス成分の供給により季節によって特有の空間分布を示すこと,しかしながらその分布は雪氷藻類の分布に直接的には影響しないことを示唆している.

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© 2019 公益社団法人 日本雪氷学会
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