雪氷
Online ISSN : 1883-6267
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南極氷床みずほ高原の雪氷層研究覚書
渡辺 興亜 佐藤 和秀山田 知充遠藤 八十一成田 英器奥平 文雄
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2021 年 83 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

1970〜80年代に行われた南極雪氷広域観測計画の概要を俯瞰し,その展開を観測史的覚書として記した.観測は南極氷床の表面で毎年生じる「積雪層」の研究に始まったが,その後発展的に浅〜中層掘削観測に重点が移っていった.年々累積し,系統的に「雪氷層」というべき存在となった氷床現象の観測に発展していった.積雪層の巨大な堆積は氷床ダイナミックスを反映する流動体となり,また数十万年に及ぶ地球の気候・環境変動の記録媒体となって存在し,現在の雪氷学の主要な研究対象に発展しているが,ここではそれには触れない.しかし,その時々の大気-氷床相互作用を反映する年間表面収支の累積結果として存在する巨大な固体水圏は「表面積雪層」がその始まりである.年々の積雪層は一枚のシートではなく,年々の気候,氷床の地形に対応する降水量や斜面下降風の強弱に合わせて産状を変え,年層形成には1〜数年に及ぶ欠層が普遍的に生じ,また斜面下降風(カタバ風)が卓越する内陸域では長期堆積中断雪面(grazed surface)が特有の雪面形状で分布する.こうした雪氷現象は氷床の成り立ちに関わっており,氷床形成の理解に不可欠である.

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© 2021 公益社団法人 日本雪氷学会
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