雪氷
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ALS計測が捉えた雪崩の特徴 —2025年2月15日計測の一雪崩について—
松田 宏川上 愛生本間 信一
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2025 年 87 巻 6 号 p. 347-359

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抄録

2025年2月に福島県の山岳地においてALS(航空機搭載型レーザースキャニング)により一つの雪崩を捉えたので定量的な形態把握を行った.その結果,次のことが分かった.雪崩は面発生乾雪雪崩で規模が小さい流れ型である.雪崩場の特徴は強い西風の影響を受ける風下斜面で,植生は草または灌木で雪崩発生抑止効果はほとんどない.発生区付近には最大深さ10.0 mに達する大規模な吹溜り箇所があった.発生区の傾斜は40~45°,走路・堆積区の傾斜は20~25°,見通し角は25°程度であった.発生区の幅は約150 mの横長で走路・堆積区は地形が影響してやや扇形状に広がり流下長は100~130 m,雪崩全体の外観としては長方形である.発生層厚は個所によっては4.0~9.0 mと推定された.9.0 mは吹溜りの影響によるものと推定された.この雪崩は幅150 mにわたり全層と表層が連続的に崩壊し,デブリの一部は発生区直下にスラブ状に堆積していた.特徴的な外観としては発生位置と停止位置,範囲が明瞭に判別できること,発生区の上部に76.6 mの長いクラックが見られることなどが挙げられる.幅150 mの約半分にあたる長さ76.6 mのクラックが崩壊せずに雪崩跡に留まっている例は珍しい.

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