雪氷
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土の凍結における連続氷層 (完全凍上) の形成条件について
武田 一夫中澤 重一
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1984 年 46 巻 4 号 p. 179-187

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抄録

土が凍結すると, 土中に氷層ができて, 土全体が体積増を起す現象が凍上である.このとき一般には, 凍土の中に氷層がとびとびにでき, 氷層と凍土層とが交互に入り混じっている.このような場合, 土中から氷層が分離析出する条件を定量的に把握することは難しい.そこで, 土中のある面から連続的にいくらでも厚い氷層がのび出る (完全凍上) ような実験条件を設定した.それによると, 円柱形をした供試体の上部および下部の側面から温度を調整することにより, 凍結面をあるところで停滞させ, 凍結面から氷層だけがのび出て行くことができる.このような完全凍上の場合には, 一つの凍土の温度勾配に対して未凍結土の温度勾配を変えると, 凍上速度 (氷の成長速度) はある最大の値から零まで変わり, 凍上速度は凍結面での熱流量差に比例することが認められた.このことから, 完全凍上が起りうる範囲の一方の境界は凍上速度が零すなわち熱流量差が零で定まるのに対し, もう一方の境界は凍上速度の最大の値 (臨界凍上速度) に対応する凍土の温度勾配で定まることがわかった.凍土の温度勾配を変えたいくつかの実験から, 臨界凍上速度は, 凍土の温度勾配に比例した.実験に用いた土では, その比例定数は2.66×10-5cm2/s・℃であった.

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