抄録
積雪から流下する融雪水と積雪内部融雪水とに含まれる化学成分について調査した.その結果,積雪から流下する融雪水のpHの低下と,積雪内部融雪水の陰イオン濃度組成の日変化とが良く対応することが明らかとなった.
積雪から流下する融雪水は,地表面に設置したライシメータを用いて調査した.融雪水量は転倒升式流量計とパルスカウンターにより測定し,同時に融雪水の電導度とpHも自動測定した.さらに,自動採水器による融雪水の採取も行った.1989年3月14日に,本融雪期最初の積雪表面からの融雪水がライシメータにより観測された.その際に,融雪水のpHは5.5から4.35へと急減した.融雪最盛期には,融雪水のpHと融雪水量の日変化に明瞭な関係が認められた.
積雪内部融雪水は,ポーラスカップ法により採取した.4月21日と24日の両日,この方法により積雪内部融雪水を採取した.21日は末明に気温が低下し,積雪表面が再凍結した.この日の積雪内部融雪水に含まれる陰イオンの濃度組成は,明瞭な日変化を示した.また,積雪から流下する融雪水のpHは,融雪水量の増加にともなって低下した.一方,末明の気温低下が少ない24日には,積雪内部融雪水の陰イオン濃度組成がほとんど変化せず,さらに積雪から流下する融雪水のpHの低下量も小さかった.