抄録
大型野外シュートを用いて行った雪塊と杭の衝撃実験から,次の解析結果を得た.
(1)衝突開始から衝撃力の最初のピーク発生時までの時間は,衝突速度12m/sで2.5~5ms,衝突速度8m/sでは7.5~10msであった.このとき杭が雪塊の衝突面から貫入した深さは,それぞれ2~6cm,2~4cmとなり,速度依存性はみられなかった.(2)杭全体にかかった力積と杭通過部分の雪塊運動量との比較では,両者がほぼ同じか力積が雪塊運動量を上回るものが大半を占めた.(3)衝撃圧を流体場における抵抗圧とみた場合の抵抗係数は,最大衝撃圧で3.5,定常衝撃圧では1.1~1.7となり,後者は受圧板の高さによって変化した.(4)衝撃圧への一次元塑性圧縮理論の適用では,衝撃圧の実測値は理論値に比べ最大値で3倍,定常値でも1.3~1.7倍となった.(5)杭上に残された圧縮コーンの頂角は44°~80°であり,これからモールの破壊条件を用いて,雪塊の内部摩擦係数を求めたところ,0.2~1.0の範囲となった.(6)衝突画像から,杭貫入中の圧縮コーン周辺に粉砕雪の流れがあることが確認された.