雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
氷河内部の水脈形成実験
小泉 謙成瀬 廉二
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キーワード: 氷河, 結晶粒界, 水脈
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1994 年 56 巻 2 号 p. 137-144

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抄録
氷河内部の水脈の形成,発達過程を明らかにする目的で,室内実験を行った.透水性のない多結晶氷を0.0℃の条件下におくと,結晶の三叉粒界に沿う水脈(vein)が,約24時間後に直径約200μmに成長し,一週間後には水の流下が確認された.また,多結晶氷に開けた細い穴に,0.00℃の蒸留水を流下させると,摩擦エネルギーによる氷の融解の結果,穴は拡大した(例:5時間で直径1.5mmから2.7mmへ).さらに,流水の温度が0.00℃よりわずかに高ければ,顕熱による融解の効果も加わり,穴の拡大率は大きくなった(例:水温0.05℃のとき,20分間で1.5mmから2.0mmへ).以上の実験と数値計算の結果,次のことが結論された.温暖氷河で春季に融解が始まると,融水が溜まった氷河上の池において,底面の氷にveinが形成され, veinを水が流れることにより水脈は拡大する.0.00℃の水が連続的に流下すると,1ヶ月で直径が10cmオーダーの太い水管にまで発達する.池の水温が日射の吸収により0℃より少しでも高ければ,発達速度はさらに大きい.この様に,冬季は不透水性の氷体でも,融解が始まると短期間の内に急速に,水脈-水路-水管のネットワークが発達し得る.
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© 公益社団法人 日本雪氷学会
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