雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
56 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 上石 勲, 川田 邦夫
    1994 年 56 巻 2 号 p. 109-118
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    野外で観測することが困難な煙型雪崩の運動についての各種の手がかりを得るために,これと類似した密度流を用いた実験を行った.実際の煙型雪崩と実験で得られた流れとは内部フルード数が一致する.密度流は水の中に食塩水を流すことによって得た.実験条件として初期食塩水密度,初期食塩水体積,斜面傾斜を変化させた.実験では,流れの速度,ヘッドの高さ,流下中の密度変化を測定した.これによって,流下速度は初期食塩水体積の1/4乗,初期食塩水密度差の1/2乗に比例することがわかった.また,流下中の流れの密度差は,初期食塩水体積と初期食塩水密度差に比例することが分かった.
  • 長谷美 達雄, 馬場 邦彦
    1994 年 56 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    関東地方では,南岸低気圧の通過の際に低気圧による暖かな東寄りの気流とこれとは相対的に冷たい北西部からの気流との間に局地前線が形成される.発達した低気圧の場合には東寄りの気流が強く内陸深くまでおよび,はじめ房総半島に見られた局地前線は内陸に進行する.一方,地上付近の北西風は関東西部の山地と前線との間に収束される.前線の西側で湿雪が降り,送電線着雪の発達条件となる.過去の大きな着雪事故はこの地域内で発生している.この地域性は関東の地形に起因し,また低気圧による局地的な前線と関連が深いと考えられるので,局地的な前線の成因と着雪発生との関わりについて考察した.
  • 上石 勲, 早川 典生, 川田 邦夫, 千葉 京衛
    1994 年 56 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    新潟県新井市の大毛無山の新井スキー場には,雪崩対策として,プロパンガスと酸素の混合物を爆発させ雪崩を誘発する“ガゼックス”が設置されている.これを使用して,1992年1月~3月にかけて数回の人工雪崩実験を行い,大規模な雪崩発生に成功した.雪崩発生時の積雪構造と雪崩規模について解析した.また1993年5月には,ガゼックスの爆発による雪面と積雪内部の空気圧測定実験を行った.その結果,ほぼスキーヤー1人の荷重に等しい空気圧を得た.
  • 小泉 謙, 成瀬 廉二
    1994 年 56 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    氷河内部の水脈の形成,発達過程を明らかにする目的で,室内実験を行った.透水性のない多結晶氷を0.0℃の条件下におくと,結晶の三叉粒界に沿う水脈(vein)が,約24時間後に直径約200μmに成長し,一週間後には水の流下が確認された.また,多結晶氷に開けた細い穴に,0.00℃の蒸留水を流下させると,摩擦エネルギーによる氷の融解の結果,穴は拡大した(例:5時間で直径1.5mmから2.7mmへ).さらに,流水の温度が0.00℃よりわずかに高ければ,顕熱による融解の効果も加わり,穴の拡大率は大きくなった(例:水温0.05℃のとき,20分間で1.5mmから2.0mmへ).以上の実験と数値計算の結果,次のことが結論された.温暖氷河で春季に融解が始まると,融水が溜まった氷河上の池において,底面の氷にveinが形成され, veinを水が流れることにより水脈は拡大する.0.00℃の水が連続的に流下すると,1ヶ月で直径が10cmオーダーの太い水管にまで発達する.池の水温が日射の吸収により0℃より少しでも高ければ,発達速度はさらに大きい.この様に,冬季は不透水性の氷体でも,融解が始まると短期間の内に急速に,水脈-水路-水管のネットワークが発達し得る.
  • 関口 辰夫
    1994 年 56 巻 2 号 p. 145-157
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    全層雪崩が発生する斜面では,特有な地形がみられることが従来から知られていてるが,詳細な記載はこれまで殆ど行われていなかった.著者は,全層雪崩発生斜面が無雪期カラー空中写真において針先で無数に傷つけたようにみえる直線状模様の地形を「筋状地形」と定義した.そして,北陸地方に調査地域を設け,空中写真判読及び現地調査により筋状地形の形態と全層雪崩との関係について調査した.さらに,全国の1:15,000カラー空中写真の判読によって筋状地形の全国的分布を明らかにした.その結果,筋状地形のみられる斜面では,全層雪崩が頻繁に発生するとともに地形形態がこれまでに報告された雪崩斜面と非常に類似し,さらに筋状地形の分布は豪雪地帯の分布と概ね一致していることがわかった.
  • 白樫 正高
    1994 年 56 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    雪を水と混合してポンプ・管路系により輸送する技術を除雪に応用することは昭和47年ごろから研究されているが,現在まで実用に供された例の報告は,昭和58年に敷設された当時の国鉄福井駅の線路除雪設備があるのみであり,未だ技術開発の途上にある.雪は水より密度が小さく,互いに付着して塊を作りやすいことから,雪水混合体の流れの挙動は石炭や鉱石の水力輸送に見られる通常の固液二相流とは異なる.それゆえ,圧力損失の予測や固体の分率の計測・制御に対する既存の方法がそのままでは適用し難い.本稿では,筆者らのこれまでの研究により得られた,雪水二相流の流動特性についての理解と計測・制御技術を概説する.
  • 河田 剛毅, 服部 賢
    1994 年 56 巻 2 号 p. 169-179
    発行日: 1994/06/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    地域冷房における冷熱輸送の熱媒には従来,冷水が用いられているが,最近の冷熱需要の増加にともないより高密度な冷熱輸送手段が求められている.その一手段として冷水に氷を混ぜてその相変化にともなう潜熱を利用する方法が有力視されており,その実現に向けた研究報告が最近急増してきている.この方法が実現されることによって得られるメリットは数多いが,氷粒子は互いに付着して塊を作りやすい性質を持っているため,その大量・長距離輸送にはさまざまな困難が現れる.本稿では,そうした氷の潜熱を利用した地域冷房実現化の見通しを探るために,そのシステム構成ならびにシステム実現上の技術的課題等を現在までの研究,開発状況を織りまぜながら紹介する.
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