雪氷
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Print ISSN : 0373-1006
紡錘状霰の落下姿勢の安定性に影響する因子について
梶川 正弘
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キーワード: , 紡錘状霰, 落下姿勢
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1996 年 58 巻 3 号 p. 223-228

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抄録

紡錘状霰の落下姿勢の安定性に及ぼす内部密度の不均一さの影響を検証するために,8ケースの降雪について頂点部と底面部の密度を測定した.この測定に加えて,頂角と宙返り運動との関係を自由落下姿勢の観測データを用いて再解析した.バルク密度が約0.3g・cm-3以下の範囲では,頂点部と底面部の密度差は小さいので,宙返りに対しては頂角θの効果が顕著となり,θ>θ*では完全宙返り(頂点が真下の位置を含む姿勢),θ<θ*では不完全宙返り(頂点が真下の位置を含まない姿勢)となる.ここで,θ*は底面部の高さをh,サイズの半分をrとして,以下の式で定義される(Jayaweera and Mason,1965).θ*=0.68h/r+π/4一方,バルク密度が0.3g・cm-3以上になると,底面部の密度がかなり大きくなり落下姿勢を安定化させるため,θ>θ*の領域でも不完全宙返りの割合が増加する.これらの結果は,紡錘状霰がその形を保ったまま成長し続けて,サイズが1cm近くになったり,紡錘状の雹になったりする可能性を示唆している.

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