1996 年 58 巻 3 号 p. 229-237
魚眼レンズで撮影した全天写真をもとに,林の全天開空率(P)と太陽経路開空率(Q)の関係を求め,林外で得られた気象要素,放射量の観測値を用いて,林内融雪の支配因子である放射収支量を推定する手法を提示し,放射収支量の開空率依存性を明らかにした.晴天日の放射収支量は,全天開空率(P)の増加とともに増大するが,Pがおよそ0.8以上では減少することがわかった.これは林内への日射透過量が増大することよりも,樹冠起源の下向き長波放射量の減少が寄与しているためである.放射収支量の開空率依存性は,日射量の多い晴天日,あるいは積雪表面のアルベドが低く,吸収される日射量の割合が大きいほど顕著になる.日射量の少ない曇天日やアルベドが高いときには,放射収支量の開空率依存性は弱く,森林状態の違いによる放射収支量の違いは小さくなっている.