抄録
本研究では,広瀬(1994)の2段階モデルを元に廃棄物の発生抑制行動の規定因を検討した。調査対象者は東京都23区,大阪市,名古屋市の住民各1000名であり,割り当て法により2010年2月にオンライン調査を行った。7種類の廃棄物発生抑制行動の中から,実行度が高い行動として詰替用品の購入による容器の再利用,実行度が中程度の行動としてマイバッグ持参,実行度が低かった行動としてトレイによって包装されていない食品の購入を選択した。各行動の規定因を明らかにするために共分散構造分析を行った結果,いずれの行動においても,行動意図を高める要因として重要なのは個人的規範と便益評価であることがわかった。リサイクル行動などで主要な規定因とされることが多かった社会的規範評価やコスト評価は,いずれの行動でもほとんど行動意図に影響していなかった。個人的規範には,各行動がごみ減量や地球温暖化防止に効果があるとする対処有効性認知が最も強く関連していた。一方,実行可能性評価が行動意図に及ぼす影響の強さは行動ごとに異なることが明らかとなった。本研究から,それぞれの行動に適したアプローチを検討する必要があると示唆された。