抄録
日本における中長期的な温暖化対策を検討する上で,将来的な生活行動様式と産業構造との関係を踏まえて化石燃料消費やCO2排出の動向を把握する必要がある。本研究では民生業務部門を対象としてエネルギー消費量を業種別に推計した。既存の統計資料において民生業務部門を対象とした体系的な調査事例は多いとは言えず,産業分類別のマクロ統計資料では用途等の詳細を把握し難い。一方,需要側の調査によるエネルギー消費原単位データでは用途や建物用途の詳細な情報が得られるが,業種等が不明であり,単純な積み上げ計算ではマクロ統計値と合わないことが多い。そこで本研究では,業種別・建物用途別延床面積を推計し,これと建物用途別床面積あたりエネルギー消費原単位のデータから積み上げ計算を行い,業種別にマクロ統計値と比較した。この結果,各資料の整合性や誤差要因について概ね明らかにすることができた。その上で,業種別・エネルギー源別,業種別・建物用途別,業種別・用途別のエネルギー消費実態について考察した。