環境科学会誌
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一般論文
炭酸化スラグと浚渫土を用いて造成した人工干潟の底質環境の評価
矢野 ひとみ中井 智司奥田 哲士西嶋 渉
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2015 年 28 巻 6 号 p. 405-414

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抄録

脱炭スラグなどの製鋼スラグは,近年,干潟や藻場の新たな造成材として着目されているが,製鋼スラグはアルカリの溶出に伴うpH上昇や固化を引き起こすことがある。また,底生生物生態系の発達に重要なシルト分や有機物も不足している。そこで本研究では,CO2ガスを用いて脱炭スラグを炭酸化処理すると共に浚渫土を加えることで,そのアルカリ溶出や土壌硬度の上昇の緩和を試みた。さらに,潮間帯を模した干潟シミュレータに炭酸化処理した脱炭スラグと浚渫土との混合材を用いて人工干潟を造成し,形成されるマクロベントス相を評価した。CO2を用いた炭酸化処理と浚渫土の添加により,pHの上昇と固化は軽減された。このスラグ混合材を用いて造成した人工干潟の深さ1cmの間隙水のpHは約9.5,土壌硬度は7 ~15 mm前後であった。また,スラグ混合材を用いて造成した人工干潟にマクロベントスを植種した結果,総個体数は維持された。これより,このスラグ混合材はマクロベントスの生息基盤として機能しうることが示された。

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© 2015 社団法人 環境科学会
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