環境科学会誌
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2014シンポジウム論文
土砂流出モデルを用いたサトウキビ農地小流域からの赤土等流出削減効果の検討
-夏植え栽培農地への緑肥導入による赤土流出抑制効果について-
林 誠二山野 博哉
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2015 年 28 巻 6 号 p. 438-447

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抄録

亜熱帯諸島における赤土等の流出量は,1995年の赤土等流出防止条例の施行以降,工事現場等では対策の実施により顕著な削減が図られている。一方で,農地では積極的な営農対策が行われていない場合も多く,必ずしも減少傾向にない。沖縄諸島の一つである久米島は正にその状況下にあり,降雨時のサトウキビを主とする農地からの大量の赤土等の流出は,サンゴ礁に留まらず,河川や沿岸域の水棲生物の生息環境を著しく悪化させている。本研究では,久米島の赤土等流出実態の把握と土砂流出モデルによる流出特性の再現化,さらに営農対策による流出削減効果の算定を目的として,サトウキビを主とする農地小流域(0.28km2)を対象に,赤土等流出連続観測,土砂流出モデルの適用,さらには流出削減シナリオの検討を行った。
2010年度と2011年度を対象とした観測から算定された一雨降雨毎の赤土等流出量は,降雨係数の増加に対して大きくばらつき,先行降雨やサトウキビの作型分布等の影響が示唆された。土砂流出モデルによる日平均赤土等流出フラックス計算値の再現性は,サトウキビ作型分布を反映させることで著しく向上した。作型別の赤土等流出量算定結果は,2010年度と2011年度のいずれも,流域面積に占める割合が5%未満にもかかわらず,夏植え1年目農地からの流出量が最も多く,全流出量に対して2010年度で69%,2011年度で43%を占めた。これを踏まえ,赤土等流出削減シナリオとして,夏植え1年目農地植付けまでの緑肥の適用効果を検討した結果,赤土等流出がより顕著であった2010年度に関して,緑肥適用期間において流域全体の流出量が45%削減されることが確認された。また,費用対効果分析の結果,赤土等流出量1トン削減に要する費用は1,238円と見積もられた。一方,緑肥適用に係る費用は,平年値ベースでサトウキビ収益の13%に相当することが分かった。

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© 2015 社団法人 環境科学会
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