環境科学会誌
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一般論文
中小企業における環境負荷の把握と環境イノベーションの関係
高 安荣中野 牧子
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2016 年 29 巻 5 号 p. 250-261

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抄録

環境負荷低減につながるイノベーションが環境マネジメントシステムの導入によって促進されることを示す研究が多数存在する。しかし,中小企業は大企業と比べ,環境マネジメントシステムの導入が困難であることが多い。中小企業が環境イノベーションを促進するにはどうすればよいのか。こうした背景を踏まえ,本研究では中小企業を対象に,自ら排出する汚染物質の把握(環境負荷の把握)という側面に焦点をあて,環境負荷の把握が環境イノベーションに影響を与えるかどうかを調べる。さらに,環境マネジメントシステムを導入していない場合における環境負荷把握の効果を調べるために,環境マネジメントシステムを導入している中小企業を除いたサンプルを用いた分析もあわせて実施する。分析に必要なデータは愛知県内の製造業に属する中小企業を対象に筆者が実施したアンケート調査を用いた。分析の結果,環境負荷を把握している中小企業は,そうでない中小企業と比べて環境負荷の小さい製品及び生産方法の開発を行っていることが明らかとなった。これは環境マネジメントシステムを導入している中小企業を除いた分析においても同様であった。本研究は,たとえISO14001をはじめとした環境マネジメントシステムを導入していない場合であっても,少なくとも自らの環境負荷を把握し「見える化」を行うことが,環境イノベーションにつながる可能性を示唆するものである。

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© 2016 社団法人 環境科学会
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