環境科学会誌
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2015 シンポジウム論文
地下水問題に対する行政関係者と住民の意識調査
-福井県小浜市とカリフォルニア州パハロバレーの地域間比較を中心に-
増原 直樹馬場 健司
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2016 年 29 巻 6 号 p. 315-324

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抄録

本研究は,地下水問題をかかえる地域を対象として,これまで主流であった行政関係者や研究者の問題設定だけでなく住民意識も反映した問題設定に基づく解決手法を実現することを最終的な目的としている。本稿では,その手がかりとして,まず地域の行政関係者と他の住民の意識との間で差異があるか,あるとすれば,そうした差異が生じている要因から学べることは何かを検討する。

具体的な研究方法としては,2014年10月から11月にかけて,福井県小浜市とアメリカ合衆国カリフォルニア州パハロバレーの2地域において,一部の設問を共通化したアンケート調査を実施し,回答結果を単純集計及び簡易なテキストマイニング手法を用いて分析した。

両地域共通の設問に対する調査結果から,2地域の間では地下水問題に対する回答者の緊急度認知及び地下水資源関連活動への参加頻度について大きな差がある可能性が示唆された。地下水問題がそれほど顕在化していない小浜市においては,行政関係者の緊急度認知を向上させることが課題として示唆された。

パハロバレーでは公務員とそれ以外の回答者との回答傾向に差異が観察されなかった。この要因として,パハロバレーにおける地下水問題に関する協議体制であるCommunity Water Dialogue(コミュニティ水対話,CWD)への参加回数が複数回の参加経験をもつ回答者が約8割に達していることが影響している可能性が考えられる。

今後の主な研究課題としては,(1)サンプル数を大きくして,今回得られた分析結果を補強すること,(2)緊急度認知と地下水関連活動への参加頻度の関係について,因果関係やその関係の強さを明確に把握するための追加的な調査,(3)現時点では小浜のみの調査にとどまっている地下水問題の詳細な項目ごとの関心度についてパハロバレーでも調査すること,(4)CWDの経緯と活動内容についてさらに調査を進めることがあげられる。

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© 2016 社団法人 環境科学会
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