環境科学会誌
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一般論文
オントロジー工学に基づく心豊かなライフスタイルの構造の明示化—第一報:手法の提案—
岸上 祐子 古川 柳蔵須藤 祐子石田 秀輝溝口 理一郎
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2018 年 31 巻 3 号 p. 89-102

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抄録

近年,気候変動問題をはじめとしたさまざまな環境問題が深刻化している。将来予想される地球環境制約下でも,低環境負荷で心豊かなライフスタイルを実現するためには,ライフスタイルを構成する概念を抽出し,自然から学んだ低環境負荷な技術で,求められる要件を具現化することが望まれる。そこでまず,多様なライフスタイルを説明できる概念を見つけ,ライフスタイルの構造を明示化する手法としてオントロジー工学の応用について検討した。データは主として環境制約が厳しかった戦前のライフスタイルを具現化した生活シーンをサンプルとし,オントロジー工学の手法の一つである人工物の機能分解木を応用した。個々の生活シーンの構造を明示するために,行為を,目的とそれを達成するための方式から構成されるととらえ,サンプルの中で述べられている行為を目的とその達成方式に分解し,あるいは抽象度を上げた概念として抽出して「行為分解木」として記述する。さらに機能分解木にはない,ライフスタイル独自の新たなノードを定義し付加した。こうして行為分解木を構築することによって,生活シーンを構造的に明示することが可能となった。具体的な行為概念だけではなく目的(ゴール)を達するための中間ゴールの概念や社会的・文化的背景や環境の制約など暗黙の前提も明示化し,ライフスタイルの構造を多層的に表すことができる可能性があることを示した。このように明示化することで,他者と理解を共有することもでき,心の豊かなライフスタイルの実現に向けての要件の抽出などに資するものと考える。

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