環境科学研究は,科学者間の学際的研究による科学知だけでなく,ステークホルダー(関係主体)の一つである市民の具体的な経験によって得られた知識(科学的な知も含む),生活知をも統合する多様な形態の協働研究が望まれる。協働研究における「対話と協働」による関係主体間の交流の中で,とりわけ環境科学分野では,社会の中で研究に対する市民の理解と共感を得る必要がある。
一方,科学の発展段階は,技術との相互作用(科学技術)による成長期からそれら関係主体間の「対話と協働」により「成熟期」に移行するものと考えられる。その発展段階における科学と「対話と協働」のつながりは,科学文明下の環境問題はじめ社会の課題解決に結びつけていくための新たな価値観や生き方の創造につながるものである。すなわち,さまざまな環境問題を現実に解決しうるのは,専門的な科学知に裏打ちされた具体的な科学技術であるが,個別問題の技術的解決はあくまで対症療法に過ぎず,そのような問題を生み出す原因となったわれわれ自身の価値観や生き方を「対話と協働」により変えていかなければならない。