環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
一般論文
産業廃棄物処理事業を題材とした受容評価に関する意見表明過程—本音と建前の意見表明に影響を及ぼす要因の検討—
尾花 恭介 前田 洋枝藤井 聡
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 31 巻 6 号 p. 261-271

詳細
抄録

本研究は,公益に関する事業計画における人々の受容評価の意見表明過程について理解を深めることを目的とした。社会的影響の先行研究を参考としつつ,受容評価の形成後から意見を表明するまでの過程を整理した後,そのうち表向きの受容評価の要否や意見の形成の過程に影響を及ぼしている要因について検討した。同過程に影響を及ぼす要因として,実験1では計画の帰結に対する動機の強さ,及び計画の帰結に対する統制可能性の認知,実験2では意見表明に伴う他者から受ける自身に対する評価,及び生活への支障をそれぞれ取り上げ,質問紙実験により影響を確認した。実験1の結果,計画の帰結に対する動機が弱い場合にそうでない場合に比べて他者の意見に近づけた意見を表明することが示されたが,帰結の統制可能性の認知については影響が見られなかった。実験2の結果,自身の有する意見をそのまま表明すると他者からの評価が低くなると評価した場合や生活に支障が出ると評価した場合に,そうでない場合に比べて,他者の意見に近づけた受容評価を表明することが示された。これらの結果を踏まえ,人々が本音を表明しやすい環境を整備するために,どのような取り組みが必要となるのかについて考察した。

著者関連情報
© 2018 公益社団法人環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top