2025 年 38 巻 2 号 p. 44-53
1,000を超える自治体が2050年までに二酸化炭素実質排出ゼロ,ゼロカーボンシティを実現することを掲げている。その実現に向けては,各地域が地域の特性を踏まえて将来の脱炭素シナリオを描き,具体的な事業の検討と計画づくりを行う必要がある。さらに計画の中では,取り組みにより脱炭素化を含む複合的な価値の実現を図ることが求められる。本稿では,このような認識の下筆者らが取り組む「地域の脱炭素社会の将来目標とソリューション計画システムの開発と自治体との連携を通じた環境イノベーションの社会実装ネットワークの構築」の内容を共有する。本研究事業では,地域のシナリオや計画の策定を支援すべく,地域の社会経済特性や国の計画等を入力変数として,各ワーキンググループで研究を進めている地域自律エネルギー,次世代交通,建設ストックマネジメント等に係る目標を設定し,その目標に向けた取り組みを行った際の社会経済効果や環境効果を算定して出力するモデルに基づく「脱炭素地域計画支援システム」構築に取り組んでいる。そのシステムでは,地域のステークホルダーとの対話による社会実装合意形成システムをも実装することを目指している。その取り組みや状況について共有し,地域脱炭素の支援および社会実装を目指す脱炭素地域作りの研究のあり方について議論する。