2026 年 39 巻 1 号 p. 77-85
近年,地球温暖化への意識が高まる中,カーボンニュートラルの実現は国際社会における重要な課題となっている。特に日本では,2050年までにカーボンニュートラルを達成することが国家目標として掲げられているが,その達成には企業や団体だけでなく,市民一人ひとりの環境意識と行動の変容が不可欠である。しかし,現状では,若年層を含む一般市民において脱炭素への意識が十分に浸透しておらず,具体的な行動への移行が課題として残されている。これらの背景を踏まえ,本研究では,若年層の環境意識を向上させ,行動変容を促進する新しいアプローチとしてゲーミフィケーションに着目し,クイズ形式の脱炭素コンピューターゲームを開発し,その有効性を検証することを目的に研究を行った。本研究では,一般市民を対象とした事前アンケート(n=10500)を基に,脱炭素への意識や行動の傾向をクラスター分析により分類し,モニターを選定した。その後,選定されたモニター(n=54)にゲームを体験してもらい,体験前後での脱炭素への意識や行動意図の変化を評価した。評価指標には,脱炭素への意識や行動を測定する多様な項目を含むアンケートを用いた。ゲームは,日常生活,家庭,政策補助金,教養といった4つのステージを用意して,難易度に応じたクイズがランダムに出題され,プレイヤーが楽しみながら脱炭素に関する知識を体系的に習得できるよう工夫した。脱炭素ゲームが脱炭素への意識と行動意欲の向上にどのように貢献するかを包括的に評価した。その結果,全体として脱炭素化に対する意識および行動意志が向上していることが確認された。行動意志においては,特に低意識・低活動クラスターの回答者が最も前向きな変化を示した。これらの結果から,クイズ形式の脱炭素ゲームは,参加者の脱炭素への意識を高め,行動変容を促進する有効な手法であることが示された。